―― 移行初日のつまずきを“思想レベル”で解決するガイド
Affinityの無料化(2025年10月末)をきっかけに、「Adobeから乗り換えてみようかな……」と考えている人が増えていると思います。
しかし、移行初日に多くの人が必ずつまずくポイントがあります。
それが ショートカットの違い です。
Photoshopの“手癖”
Illustratorの“指の記憶”
Lightroomの“動作感覚”
これらが Affinityでは微妙に違う。
さらにやっかいなのは、
単なるショートカットの問題ではなく「思想の違い」から生まれている、という点。
この記事では、Adobe経験者でも初日から迷わなくなるように、
完全対応表
つまずくポイント(なぜ起きるか)
思考法としての「Adobe vs Affinity」
をまとめた“WordPress版の決定版ガイド”として再構成しています。
1. まず結論:違いは「ショートカット」ではなく「思想」から生まれる
最初に言っておきます。
Adobe → Affinity の移行で起きる違和感の9割は「ショートカットの違い」ではありません。
本質は、
Adobe:ツールを持ち替える文化
Affinity:レイヤーで世界を組む文化
という“思想の差”にあります。
この違いを理解していないと、どれだけショートカットを覚えても操作に違和感が残ります。
2. AdobeとAffinityの根本的なUI哲学の違い
■ Adobeの思想:ツールを持ち替える
IllustratorもPhotoshopも、
「ペンツール → 文字ツール → 移動ツール」など、
“ツール中心”に作業が進む設計になっています。
■ Affinityの思想:レイヤーで世界を組む
Affinityでは、
ツールよりもレイヤー階層が“世界そのもの”。
クリッピングはコマンドではなく“階層移動”
アピアランスではなく“レイヤー構造”
黒矢印・白矢印は“役割が明確に分離”
AdobeとAffinityの違いは、
言語の違う国に移住するようなものなのです。
3. 【完全対応表】Adobe → Affinity ショートカット一覧
3-1. 共通ショートカット(覚え直し不要)
| 操作 | Adobe | Affinity | 備考 |
|---|---|---|---|
| ズームイン | Ctrl/Cmd + + | Ctrl/Cmd + + | 完全共通 |
| ズームアウト | Ctrl/Cmd + - | Ctrl/Cmd + - | 完全共通 |
| 手のひらツール | Space | Space | 完全共通 |
| 元に戻す | Ctrl/Cmd + Z | Ctrl/Cmd + Z | 完全共通 |
| やり直し | Ctrl/Cmd + Shift + Z | Ctrl/Cmd + Shift + Z | 完全共通 |
| グループ化 | Ctrl/Cmd + G | Ctrl/Cmd + G | 完全共通 |
| グループ解除 | Ctrl/Cmd + Shift + G | Ctrl/Cmd + Shift + G | 完全共通 |
| 複製(ドラッグ) | Alt/Option + Drag | Alt/Option + Drag | 完全共通 |
Adobe経験者はここで安心してOKです。
3-2. 違いが大きいショートカット(移行者が戸惑う部分)
● ズーム操作(最大のつまずき)
| 操作 | Adobe | Affinity |
|---|---|---|
| Alt+ホイールでズーム | できる | ※できない(横スクロールになる) |
| Ctrl/Cmd + ホイール | 回転や別の挙動 | ズームイン/ズームアウト |
Affinityのズームは「Ctrl/Cmd+ホイール」
ここだけ初日に覚えるとストレス激減。
● UI非表示
| 操作 | Adobe | Affinity |
|---|---|---|
| 全画面表示 | F | なし |
| UIのオンオフ | Tab | Tab |
● クリッピング(考え方が別物)
| 操作 | Adobe | Affinity |
|---|---|---|
| クリッピング | Ctrl/Cmd + 7 | レイヤーをインデント(ドラッグ) |
| 操作の発想 | コマンド | 階層 |
ショートカットではなく世界観が違うため、ここで躓く人が多い。
3-3. よく使うレイヤー系ショートカット
| 操作 | Adobe | Affinity |
|---|---|---|
| 一段前へ | Ctrl/Cmd + ] | Ctrl/Cmd + ] |
| 最前面へ | Ctrl/Cmd + Shift + ] | Ctrl/Cmd + Shift + ] |
| 一段後ろへ | Ctrl/Cmd + [ | Ctrl/Cmd + [ |
| 最背面へ | Ctrl/Cmd + Shift + [ | Ctrl/Cmd + Shift + [ |
操作は同じでも 「意味が違う」 のがポイントです。
4. 移行初日に“必ず”つまずく3大ポイント
① クリッピングを“コマンド”として探す
Affinityはドラッグ操作。
コマンド文化のAdobe脳だと反射で探してしまう。
② アピアランス文化が身体に染みついている
Illustratorは「1つのパスに効果を盛る文化」。
Affinityは「レイヤーで世界を建てる文化」。
③ 白矢印ツールを探してしまう
Affinityは役割が厳密に分かれている(パス編集は必ずノードツールに持ち替える必要がある)
5. Adobe脳からAffinity脳へ:理解を加速させる“変換思考”
Adobe経験者が早く慣れるために、次のように考えることをお勧めします。
| Adobeの発想 | Affinityの発想 |
|---|---|
| ツール中心 | レイヤー中心 |
| コマンドで形を作る | 階層で世界を作る |
| 黒矢印/白矢印 | ノードツール(役割厳密) |
| クリッピング=命令 | クリッピング=レイヤーの構造変化 |
この“変換マップ”を頭に入れると、Affinityのすべてが理解しやすくなります。
6. まとめ:ショートカットは「世界観の入口」
ショートカットの違いは単純な覚え直しで解決できます。
しかし本質的には、
AdobeとAffinityは「別の世界を生きている」。
だからこそ、ショートカット対応表は“辞書”ではなく、
Affinityという新しい世界への
地図であり、コンパスであり、案内板
として使ってほしい。
AdobeからAffinityへ移るあなたの旅が、少しでも軽くなることを願っています。
