Affinity移行ガイド ─ Illustratorユーザーが知るべき“思想の違い”

Adobe Affinity デザインとツール

Affinity移行ガイド ─ Illustratorユーザーが知るべき“思想の違い”

2025年10月末、CanvaがAffinityの完全無料化を発表。
Photo/Designer/Publisher が1つのアプリに統合され、モード切り替えで自由に行き来できるようになりました。プロレベルのデザイン環境が誰でも無償で使える時代に入ったと言えます。

その結果、

  • 「IllustratorからAffinityに移行したほうがいいのか?」
  • 「SNSやブログ用のデザインはAffinityで十分なのか?」

と迷う人が一気に増えています。

この記事では、Illustrator歴のあるユーザーが最初につまずく“思想の違い”を中心に、移行をスムーズにするためのポイントをまとめました。

結論:IllustratorとAffinityは“思想”が違う(ここを理解できると移行が一気に楽になる)

  • Illustrator = 印刷文化で育った「パスの世界を極めるための道具」
  • Affinity = 現代の創作者向けに作られた「レイヤーで世界を組む道具」

どちらが優れているかではなく、前提となる文化と設計思想が異なるため、得意分野が変わります。

その前提を理解すれば、移行は驚くほどスムーズになります。

1. IllustratorとAffinityの“生まれた背景”が違う

Illustratorは「印刷業界を支えるため」に生まれた

Illustrator(1987〜)は、商業印刷のために最適化されたソフトです。

そのため、

  • CMYK
  • アピアランス
  • アウトライン化
  • 入稿チェック
  • 書体管理

など「印刷の厳密さ」を前提とした文化を持っています。

現在はWebやSNS制作にも広く使われています。

結果、強力ですが、慣れるまでに体力と学習コストが必要です。

Affinityは「現代のデジタル制作」に合わせて作られた

Affinityシリーズは2010年代に誕生し、

  • ベクター
  • ラスター
  • 写真加工
  • テキスト
  • レイアウト

これらをひとつのアプリ内でシームレスに扱うという発想で設計されています。

Illustratorが“パスの世界”なのに対し、
Affinityは“レイヤーの世界”。

この思想の違いが、操作感の違いを生んでいます。

2. クリッピングに現れる「思想の差」

IllustratorからAffinityに移行した人がまず驚くのが、クリッピング操作の軽さです。

Illustratorのクリッピング

長い歴史があり、業界標準として強力ですが、

  • グループ化
  • 整列
  • アピアランス
  • 不透明マスク

などとの兼ね合いで構造が複雑になりやすい。

Affinityのクリッピング

Affinityはとても直感的。

画像や素材を“形にドラッグするだけ”でカチッとクリップされる。

親がベクターであれば、子には文字でも画像でも何でも入る。
発想はまさに“素材を箱に入れていく”感覚。

  • 速い
  • 迷わない
  • レイヤー構造が美しく保てる

この軽快さが、Affinityらしさの象徴です。

3. Illustratorは「パス絶対主義」、Affinityは「レイヤー構築主義」

Illustratorは「線と塗り」を極める文化

  • アンカーの配置
  • ハンドル操作
  • アピアランスの重ね方

“1つのパスをどこまで作り込めるか”が中心にあります。

Affinityは「レイヤーで世界を組む」文化

Publisherの誌面デザインのように、

  • レイヤー階層
  • 効果の重ね方
  • ベクター+画像+テキストの一体化

という「世界観ごと構築する発想」が核にあります。

Illustrator:ベクターは“線”の世界
Affinity:ベクターは“配置”の世界

得意分野が違うのは、この思想が理由です。

4. IllustratorとAffinity、それぞれの得意分野

■ Illustratorが強い領域

  • ロゴデザイン
  • 広告デザイン
  • 高精度の印刷物
  • 複雑なパス加工
  • 入稿データの作成

「印刷の厳密さ」はIllustratorの牙城。

■ Affinityが気持ち良く使える領域

  • SNS用画像
  • ブログのアイキャッチ
  • Webバナー
  • AI画像との合成
  • 小説・詩の表紙制作
  • Publisherとの連携

現代の創作者のワークフローに、Affinityは驚くほど合っている。

5. 無料化で移行者が増える理由

  • Illustratorの月額負担
  • SNS制作が中心になり印刷の必要性が下がった
  • AI画像を使う制作が主流化した
  • ブログ・電子書籍の表紙制作など、市民クリエイターが増加

Affinityの無料化は、この流れに完璧にフィットしています。

6. IllustratorユーザーがAffinityでつまずく3つのポイント

① アピアランスの方向性が違う

Illustratorのように「1つのパスに外観を何段も積んで作り込む」文化は薄く、Affinityでは必要な効果をレイヤーとして分けて構築する。

レイヤー構造で組み立てる発想に切り替えると一気に楽になります。

② パス操作の感覚が違う

アンカーやハンドルの挙動がIllustratorとは微妙に異なる。

Affinityは“シェイプ主体”で作ると圧倒的に快適。

③ 印刷の世界はIllustrator文化が強い

入稿テンプレや書類はAI形式が中心。

個人用途ならPDF/X入稿でほぼ問題なし。ただし、印刷所によっては非推奨の場合もあるので要確認。

7. 結局、Affinityに移行したほうがいいのか?

あなたの目的が以下のどれかなら、Affinityは移行すべきです。

  • SNSのアイキャッチ
  • 小説や詩の表紙
  • ブログのヘッダー画像
  • AI画像を素材にした制作
  • Adobe税からの解放
  • 軽くて快適な動作

逆に、印刷中心の業務であれば、Illustratorに軍配が上がります。

8. Affinityは“創作者のための道具”

AI画像・テキスト・ベクター・写真をレイヤーで組み上げるAffinityは、「作品世界を作る」という現代の創作文化に寄り添ったソフトです。

  • Illustratorは“専門職の道具”
  • Affinityは“クリエイターの道具”

無料化でその差はさらに縮まり、移行のハードルも下がりました。

この記事があなたの移行判断の助けになれば幸いです。

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